輪島市中心部では、図1に示すように、JMA輪島観測点(輪島市鳳至町震度観測点、E10)とK-NET輪島観測点(ISK003)とで強震波形が得られている。K-NET輪島は、ボーリング柱状図を図2に示す通り良好な地盤である。一方、JMA輪島は、ボーリングデータはないものの、河川に囲まれた沖積平野に位置しており、K-NET輪島の地盤より軟弱であると考えられる。
図1 輪島市中心部の強震観測点位置
図2 K-NET輪島のボーリング柱状図(防災科研K-NETウェブサイトより引用)
両地点における強震記録の速度波形(0.1〜10Hz)と疑似速度応答スペクトル(減衰5%)を図3に、水平動粒子軌跡を図4に示す。水平動粒子軌跡は、速度波形で最大値をとる前後各3秒について示している。
2地点間の距離は1km強程度であるが、JMA輪島の最大速度はK-NET輪島の2倍以上の99kineで、K-NET輪島より長周期成分に富んでいる。また、JMA輪島では、周期2秒弱の卓越が顕著で、疑似速度応答値は450kineに達している。両地点での地震動の相違は、上述の地盤条件の相違が大きく影響していると考えられる。
図3 輪島市中心部での速度波形(0.1-10Hz)[上]と疑似速度応答スペクトル(減衰5%)[下]
図4 輪島市中心部での水平動粒子軌跡
翠川・三浦は両地点で常時微動観測を行っている1)が、そのH/Vスペクトル比はJMA輪島で約0.9秒が卓越し、K-NET輪島では明瞭なピークが見られないとしている。また、JMA輪島での地震動のH/Vスペクトル比について、最大加速度100gal程度以下の地震では0.8〜0.9秒、最大加速度が約130galの1993年能登半島沖地震では1秒が卓越しているが、今回の地震の本震では約2秒が卓越しており、地盤の非線形化の影響が見られたことを指摘している。
図5には、JMA輪島とK-NET輪島の両地点で強震波形が得られている地震について、K-NET輪島に対するJMA輪島の水平動フーリエスペクトル比を示す。赤色のラインが能登半島地震本震である。それ以外は能登半島地震以前の地震で、そのほとんどは2004年新潟県中越地震本震およびその余震である。これからも、JMA輪島は地震によらずK-NET輪島に比べて増幅特性が大きいことが分かる。また、能登半島地震本震では、それ以前の地震と比べてピーク周波数が低下し、1Hz以上の高周波数領域の比も小さくなっており、JMA輪島の地盤の非線形化が生じたことに対応している。
図5 JMA輪島/K-NET輪島のフーリエスペクトル比
JMA輪島のある鳳至町では、古い木造住宅の被害が少なからず見られた(写真はこちら)。これらの住宅は、柱も細く壁も不充分で、比較的卓越周期が長いと考えられる。住宅の新旧の差異のみならず、住宅の建物周期と地盤の卓越周期が近いことも被害を大きくした要因と考えられる。
輪島市門前地区(旧門前町)では、図6に示す、石川県の震度観測点(輪島市門前町走出)で計測震度6.4(震度6強)が観測されている1)。強震波形は残っていない。この地点は、JMA輪島やK-NET輪島の位置する輪島市中心部から南西方向に約15kmの地点である。計測震度が得られている地点の中で最も高い震度となっているが、震源インバージョン解析によって断層のすべりが大きかったとされる2)3)ところの直上にあたり、周辺の被害とも調和的な結果となっている。
図6 輪島市門前地区の強震観測点位置