志賀町

● 志賀町富来地区

志賀町富来地区(旧富来町)では、図1に示すように、JMA富来観測点(志賀町富来領家町、914)K-NET富来観測点(ISK006)とで強震波形が得られている。K-NET富来でのボーリング柱状図を図2に示す。JMA富来ではボーリングデータはないものの、若松ほかの地形分類1)では砂州・砂丘に相当する。


図1 志賀町富来地区の強震観測点位置



図2 K-NET富来のボーリング柱状図(防災科研K-NETウェブサイトより引用)


両地点における強震記録の速度波形(0.1〜10Hz)と疑似速度応答スペクトル(減衰5%)を図3に、水平動粒子軌跡を図4に示す。水平動粒子軌跡は、速度波形で最大値をとる前後各3秒について示している。

K-NET富来での最大加速度934galは、今回の地震で強震波形が得られている中では最大であり、JMA富来と比べると約1.8倍となっている。速度波形で見ると、両地点の波形の形状は概ね似ており、最大速度もそれほど変わらないが、卓越周期に違いが見られる。K-NET富来の水平動粒子軌跡は北西-南東方向に卓越しているが、JMA富来では概ね東西方向が卓越しており、サイト特性の違いが現れていると考えられる。両地点は4km弱離れており、JMA富来が平地であるのに対し、K-NET富来は山地であり、約70mの標高差がある。


図3 志賀町富来地区での速度波形(0.1-10Hz)[上]と疑似速度応答スペクトル(減衰5%)[下]



図4 志賀町富来地区での水平動粒子軌跡


西川ら、翠川・三浦はともに両地点での常時微動観測を行っているが、そのH/Vスペクトル比の卓越周期について、西川らでは両地点とも明瞭なピークが見られないとしている2)のに対し、翠川・三浦はJMA富来では約0.4秒、K-NET富来では約0.15秒となっている3)

図5には、JMA富来とK-NET富来の両地点で強震波形が得られている地震について、K-NET富来に対するJMA富来の水平動フーリエスペクトル比を示す。赤色のラインが能登半島地震本震である。それ以外は全て2004年新潟県中越地震本震およびその余震である。能登半島地震本震では、卓越周期が低下し高振動数域で値が小さくなっているので、JMA地点では地盤の非線形化が生じたものと思われる。ただし、K-NET富来の方が断層面に近い影響など他の要因も含まれていると考えられ、地盤条件や建物の影響(志賀町役場富来支所庁舎の1階に設置されている)など、今後詳しい検討が必要である。


図5 JMA富来/K-NET富来のフーリエスペクトル比



● 志賀町中心部

志賀町中心部(旧志賀町)では、図6に示す、石川県の震度観測点(志賀町末吉千古)で計測震度5.5(震度6弱)が観測されている3)。強震波形は残っていない。JMA富来から南南東方向に約16kmの地点である。K-NET富来やJMA富来よりも震源から遠く、計測震度も小さくなっている。観測点周辺の被害もほとんど見られない。


図6 志賀町中心部の強震観測点位置




参考文献
1)若松加寿江、松岡昌志、久保純子、長谷川浩一、杉浦正美(2004): 日本全国地形・地盤分類メッシュマップの構築、土木学会論文集、No.759/I-67、pp.213-232.
2)西川隼人、宮島昌克、堂下翔平、北浦勝(2007): 石川県内の観測点における地盤増幅度の評価、日本地震工学会論文集、第7巻第2号(特集号)、pp.96-109.
3)翠川三郎、三浦弘之(2007): 2007 年能登半島地震における強震動と強震観測点での常時微動特性(速報)


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