能登町中心部では、図1に示すように、JMA能登観測点(能登町牛出津、915)とK-NET能都観測点(ISK004)とで強震波形が得られている。K-NET能都でのボーリング柱状図を図2に示す。
図1 能登町中心部の強震観測点位置
図2 K-NET能都のボーリング柱状図(防災科研K-NETウェブサイトより引用)
両地点における強震記録の速度波形(0.1〜10Hz)と疑似速度応答スペクトル(減衰5%)を図3に、水平動粒子軌跡を図4に示す。水平動粒子軌跡は、速度波形で最大値をとる前後各3秒について示している。
JMA能登とK-NET能都は、約300mしか離れていないが、地震動の特徴は全く異なっている。JMA能登は、K-NET能都と比べて最大加速度は約半分で、最大速度は約2倍となっている。卓越周期はK-NET能都が約0.5秒であるのに対し、JMA能登では約1.5秒である。水平動粒子軌跡についても、JMA能登が南北方向に卓越しているのに対し、K-NET能都では特徴的な方向性は見られない。このことも両地点でのサイト特性が大きく異なっていることを示している。
図3 能登町中心部での速度波形(0.1-10Hz)[上]と疑似速度応答スペクトル(減衰5%)[下]
図4 能登町中心部での水平動粒子軌跡
翠川・三浦による常時微動観測1)によると、そのH/Vスペクトル比の卓越周期は、JMA能登で約0.9秒、K-NET能都で約0.4秒となっている。
図5には、JMA能登とK-NET能都の両地点で強震波形が得られている地震について、K-NET能都に対するJMA能登の水平動フーリエスペクトル比を示す。赤色のラインは能登半島地震本震、青色のラインは2000年6月7日の石川県西方沖の地震(Mj6.2)である。それ以外の多くは2004年新潟県中越地震本震およびその余震である。能登半島地震では、他の地震と比べてピーク周波数が低下している。複数の地震のフーリエスペクトルを比較すると、両地点とも能登半島地震では地盤の非線形化によりピーク周波数が低下しているが、JMA能登のほうがより低下の程度が大きい。K-NET能都での地盤データによると、表層13mは軟弱層であるが、それより下層は岩盤である。一方、JMA能登は、海に面した能登町役場にあり、軟弱層がK-NET能都より厚く堆積しているものと考えられる。JMA能登の震度計は能登町役場庁舎の1階に設置されており、この影響についても今後の検討が必要である。
図5 JMA能登/K-NET能都のフーリエスペクトル比