七尾市中心部では、図1に示すように、JMA七尾観測点(七尾市本府中町、535)とK-NET七尾観測点(ISK007)とで強震波形が得られている。K-NET七尾、JMA七尾付近でのボーリング柱状図を図2、図3に示す。両地点とも軟弱地盤である。
図1 七尾市中心部の強震観測点位置
図2 K-NET七尾のボーリング柱状図(防災科研K-NETウェブサイトより引用)
図3 JMA七尾付近のボーリング柱状図(「石川県平野部の地盤図集」1)より引用)
両地点における強震記録の速度波形(0.1〜10Hz)と疑似速度応答スペクトル(減衰5%)を図4に、水平動粒子軌跡を図5に示す。水平動粒子軌跡は、速度波形で最大値をとる前後各3秒について示している。
両地点は約1km程度離れているが、波形の形状や最大振幅はよく似ている。EW成分では、K-NET七尾よりJMA七尾のほうが長周期成分に富んでいる。
図4 七尾市中心部での速度波形(0.1-10Hz)[上]と疑似速度応答スペクトル(減衰5%)[下]
図5 七尾市中心部での水平動粒子軌跡
翠川・三浦による常時微動観測2)によると、そのH/Vスペクトル比の卓越周期は、JMA七尾で約1.5秒、K-NET七尾で約1秒となっている。
図6には、JMA七尾とK-NET七尾の両地点で強震波形が得られている地震について、K-NET七尾に対するJMA七尾の水平動フーリエスペクトル比を示す。赤色のラインは能登半島地震本震、青色のラインは2000年6月7日の石川県西方沖の地震(Mj6.2)である。それ以外はほとんどが2004年新潟県中越地震本震およびその余震である。両地点とも、複数の地震のフーリエスペクトルを比較すると、能登半島地震では地盤の非線形化によりピーク周波数が若干低下しているが、同程度であるため、地点間のスペクトル比をとると、地震の相違による影響はあまり見られなくなっている。両地点とも沖積平野に位置し、軟弱な地盤上にあり、地盤条件の差はそれほどないものと考えられる。
図6 JMA七尾/K-NET七尾のフーリエスペクトル比
七尾市田鶴浜地区(旧田鶴浜町)では、図7に示す、石川県の震度観測点(七尾市田鶴浜)で計測震度6.2(震度6強)が観測されている2)。強震波形は残っていない。この地点はJMA七尾やK-NET七尾が位置する七尾市中心部より西方向に約7kmの地点である。田鶴浜の震度観測点付近のボーリング柱状図を図8に示すが、図2や図3に示したK-NET七尾やJMA七尾の地盤よりも良好であり、周辺の家屋被害も特にない。JMA七尾、K-NET七尾に比べて震源にやや近いことを考慮しても両地点より計測震度が0.9も大きいことは考えにくい。田鶴浜の震度観測点では、気象庁の報道発表にもあるように、液状化の痕跡により計測装置が傾斜しており、実際の揺れよりも大きな震度が記録された可能性が高いと考えられる。
図7 志賀町中心部の強震観測点位置
図8 田鶴浜震度観測点付近のボーリング柱状図(「石川県平野部の地盤図集」1)より引用)