道路災害業務におけるTLS(地上型レーザースキャナー)の活用

2021.3.31

活用が進む災害時のICT

国土交通省では、発生した災害に対して復旧等の迅速化・効率化のためICT(情報通信技術)の活用を進めています。ICTを活用することで『現地計測時間の短縮』『災害直後の詳細測量により設計・施工に必要な情報を取得』『短時間の広範囲測量により机上にて復旧検討が可能』など多くの効果が見込まれています。
また、近年では毎年のように全国各地で自然災害が頻発し、甚大な被害が発生していることから、災害発生時に迅速に被災状況を把握するための有効な測量技術が求められています。

台風19号による道路災害の復旧

2019年10月に発生した台風19号により宮城県丸森町は甚大な被害を受けたため、復旧のための災害査定資料が作成されていました。これを受けEJECでは査定設計箇所における実施設計を実施することになりました。
対象となったのは、山林部の斜面崩壊や五福谷川の氾濫により被災した道路(二級町道 欠入落合線)です。災害査定図書の内容を基に現地状況の再調査を行った上で、測量、地質調査、道路設計を行いました。

査定設計箇所における実施設計の方法

実施設計を行うためには、まずベースとなる地形観測を行い、平面図を作成する必要があります。迅速かつ精度の高い平面図を提供するため、通常の地形観測手法であるトータルステーションによる観測に加えTLS(地上型レーザースキャナー)を使用し、現道周辺の山地斜面の計測を行いました。
TLSによる主な計測領域は斜面の崩壊した箇所及び対岸の地形であり、作業員が直接現地に取り付くことが困難な地形状況であっても、対象地形を安全かつ迅速に計測が可能です。また、精度を確保するため、地理院の5mメッシュデータ及び発災後に国土交通省が計測した航空レーザー測量成果データとの比較検証も行いました。
これにより、通常の測量作業工程を短縮し、設計検討用の現況平面図を提供、実施設計を速やかに行い、円滑な災害復旧に寄与しました。

ICT:Information and Communication Technology 情報通信技術
TLS:terrestrial laser scanner 地上型レーザースキャナー

業務名 元災測委第45号 令和元年災(台風19号)に伴う測量・詳細設計業務委託(その20)
業務内容
測量業務:
3級基準点測量11点、4級基準点測量47点、4級水準測量2.7㎞、現地測量0.125km²、路線測量2.14㎞、用地測量0.88ha
地質調査:
機械ボーリング、サウンディング及び原位置試験、総合解析
道路設計:
道路詳細設計(A)
期間 2020年4月22日~2021年3月26日
事業主体 宮城県 丸森町

レーザー:国土交通省(国土地理院を含む)やJIS(日本工業規格)ではレーザと称する