3次元設計に展開可能な点群データで水害対策に貢献

2023.2.28

被災地で始まった水害対策

2011年、台風12号による記録的な大雨で、紀伊半島では斜面崩壊や土石流などの土砂災害が多数発生しました(紀伊半島大水害)。加えて台風15号の大雨も被害を拡大させ、その後も被災箇所から土砂が絶えず渓流や支川に流出しています。ひとたび豪雨があれば荒廃地からの土砂で容易に河床が上昇し、洪水氾濫が発生しかねない、治水安全度が低い状況にありました。
そこで、国民の生命・財産および重要施設等の社会基盤を保全するために、2017年から20年間にわたる事業が計画され、紀伊山系の土砂・洪水氾濫対策、土石流対策の整備が進められています。
〈事業の対象〉
○土砂・洪水氾濫対策……砂防堰堤、渓流保全工、床固工群、排水路工、斜面対策、遊砂地 など
○土石流対策……砂防堰堤、渓流保全工など

付加価値の高い点群データ

本業務は、従来の計測機器による地形測量、計測結果をもとに、平面図(2次元)を作成するものでした。しかし、現場は山間部の狭隘な地形で、かつ土砂災害警戒区域内であり、崖地や崩落危険箇所があることから、エイト日本技術開発(EJEC)では現地踏査後に、トータルステーションによる地形測量に比べて現地作業日数を短縮できる、UAV搭載型レーザースキャナによる計測を提案しました。土石流対策施設の検討には、3次元データが以下のとおり有効であるというのも、提案理由のひとつです。

  • 河道が湾曲しているため、3次元的に堆砂面を表現し、正確に効果量を算出できる。
  • 効果量は堆積面サーフェスと計画地盤モデルの差分により算出し、複数のトライアルを高精度で達成できる。(計画捕捉量、計画堆積量に相当する空間の把握)
  • 3次元点群ビューワにより、受発注者間で土石流対策施設を視覚的に相互確認し、条件を確実に確認できる。

そして、詳細設計に必要な平面図(2次元)とあわせて、UAV搭載型レーザースキャナで計測した0.545k㎡の点群データを提出しました。今後、3次元モデルでの設計(BIM/CIM対応)も可能となる付加価値の高いデータです。また、災害が発生した時には、災害発生前後の点群データを比較することで、早期に被災状況・規模を把握できるため、将来的にも有効なデータとなっています。

業務名 紀伊山系熊野川流域(和歌山)他土石流対策施設測量業務
業務内容 和歌山県域における土砂・洪水氾濫対策及び土石流対策(全11箇所)を目的として、
計画施設の予備詳細設計を今後実施していくために必要となる地形等に関する基礎資料を得る測量業務。
2級基準点測量23点、3級基準点測量6点、4級基準点測量206点、現地測量0.545k㎡、路線測量6.54km
期間 2022年4月1日~2023年2月28日
事業主体 国土交通省 近畿地方整備局 紀伊山系砂防事務所

レーザー:国土交通省(国土地理院を含む)やJIS(日本工業規格)ではレーザと称する