河川定期横断測量(深浅測量)におけるASVを活用した3次元測量
2020.7.31
台風による大規模水害の発生
福島県の阿武隈川水系では、2019年10月に発生した台風19号の影響により降り続いた雨で河川水位が上昇し、上流部や支川では堤防決壊等が多数発生しました。また、下流部では大規模な内水被害が発生するなど、流域全体に甚大な被害を受けました。河川においては、堤防の決壊に加え斜面崩壊や支渓流からの土砂流出などの土砂移動により河床が大規模に変動し、河床形状が変化していました。
複雑な水中地形を3次元で測量
河川管理者が災害復旧及びその後の管理を行うためには、その基礎として変化後の状況を把握する必要があります。
測量対象となった区間では大規模出水により河床が大きく変動していたことから、正確に現況河床形状を把握するために、面的な3次元計測データを取得することになりました。
対象河川は山間を蛇行しつつ流れ、さらに瀬・淵が連続するため水深が複雑であり、従来の測量方法では横断地形データの取得に多くの時間と労力が必要な地形状況となっています。そこで、EJECからの技術提案により小型無人ボートASV(ナローマルチビーム・GNSS・IMUを搭載)による測量方法が採用されました。
ASVはコンパクトなシステムであるため浅瀬においても観測が可能です。加えて計測機器は2人で運搬が可能で機動性に優れており、従来の計測方法よりも短時間で複雑な地形の観測が可能です。
さらに、地上からナローマルチビームによる3次元地形データを取得し、併用することで、正確な現況河床形状を把握しました。
河川管理は線から面へ
国土交通省が実施している「河川定期縦横断測量」は、国土管理上重要な地位を占める河川における管理・運用を行うための基礎資料となるべき重要な業務です。一級河川の直轄管理区間においては最新の河床形状及び長期的な河道変化を把握することを目的に、原則として5年以内のサイクルで実施されています。また今回のように大規模な改修工事や砂利採取、河床の大規模に変動するような大規模出水後も実施されます。
「河川定期縦横断測量」の作業実施要領においては、河床内の地形把握手法として200m毎の河川断面図での線的な河川管理方法が規定されています。しかし近年では計測機器の発達に伴い様々な観測手法が提案されており、3次元計測による高精度な面的管理への移行が求められています。
本業務もこの流れに沿うものであり、EJECでは今後も高精度な計測技術の向上を図り、河川管理業務の高度化・効率化に貢献します。
ASV:Autonomous Surface Vehicle
業務名 | 阿武隈川上流本宮・郡山地区外定期横断測量 |
業務内容 | 4級基準点測量4点、3級水準測量14.3㎞、河川測量28.6㎞、深浅測量143測線 |
期間 | 2020年3月26日~2020年7月31日 |
事業主体 | 国土交通省 東北地方整備局 福島河川国道事務所 |
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