強震観測値と地震動分布の補間推定

(1)各機関での観測地震動

各機関によって観測され、現時点で公表されている情報から、観測値の分布を整理する。
防災科研K-NETKiK-net港湾地域強震観測の強震観測点および一部の気象庁震度観測点については、得られた強震波形データがウェブサイトで公開されている。また、国土交通省の強震観測点では最大加速度とSI値が、建築研究所の強震観測点と一部の地方公共団体震度観測点では最大加速度と計測震度がウェブサイトで公表されている。
波形データが公開されている地点については、最大加速度、最大速度、SI値、計測震度の4種の地震動強度指標を算出し、その他の地点については公表されている指標のみを用いて作成した観測値の分布を図1〜4に示す。


図1 最大加速度分布


図2 最大速度分布


図3 SI値分布


図4 震度分布

(2)地震動分布の推定

 地震動の大きさと被害の関係を考える上では、地震動分布が必要となるため、本震で得られた観測値の空間補間により、面的な地震動分布推定を行う。

・表層地盤の増幅度
面的な地震動分布推定を行う上では、表層地盤の増幅特性を考慮することが必要となる。若松ら(2004)1)による250mメッシュの地形分類に基づき、松岡ら(2005)2)の関係を用いて得られる深さ30mまでの平均S波速度(Vs30)を地盤パラメータとする。その分布を、図5に示す。翠川・松岡・作川(1994)3)によるVs30と最大速度増幅度の関係により増幅度を評価する。計測震度については、童・山崎(1996)4)の関係式を用いて、最大速度から換算する。


図5 若松ら1)の250mメッシュ地形分類に基づくVs30の分布

・補間方法
強震観測点での地表面地震動指標を工学的基盤に引き戻し、基盤位置で250mメッシュ単位で空間補間した後、各250mメッシュについて再び増幅度を考慮することにより、地表面における250m単位の地震動分布が作成できる。ここで、単純な補間方法では震源からの距離の影響を考慮できないので、司&翠川(1999)5)の距離減衰式をトレンド成分(平均値)としたsimple Kriging法を用いている。プログラムは、防災科学技術研究所川崎ラボラトリーより公開された「rasmo6)を使用した。

・推定結果
以上により推定された250mメッシュ単位の最大速度分布および計測震度分布を図6、7に示す。補間に用いた観測点の中では、K-NET柏崎(NIG018)の観測値が図抜けて大きく、断層面に近いため、補間結果は柏崎を中心に同心円に近い分布となっている。
今後、柏崎市付近のボーリングデータの整備などを行うことにより、推定精度を高めていく予定である。


図6 最大速度分布


図7 計測震度分布


謝辞
気象庁震度計、防災科研K-NET、KiK-net、港湾地域強震観測の強震観測記録および国土交通省、建築研究所、新潟県の観測地震動指標を使用しました。記して謝意を表します。

参考文献
1)若松加寿江、松岡昌志、坂倉弘晃(2005):新潟地域の地形・地盤分類250m メッシュマップの構築とその適用例、第28回地震工学研究発表会、土木学会
2)松岡昌志、若松加寿江、藤本一雄、翠川三郎(2005):日本全国地形・地盤分類メッシュマップを利用した地盤の平均S波速度分布の推定、土木学会論文集、No.794/I-72、pp.239-251.
3)翠川三郎、松岡昌志、作川孝一(1994):1987年千葉県東方沖地震の最大加速度,最大速度にみられる地盤特性の評価、日本建築学会構造系論文集、第442号、pp.71-78.
4)童華南、山崎文雄(1996):地震動強さと新しい気象庁震度との対応関係、生産研究、48、11、pp.547-550.
5)司宏俊、翠川三郎(1999):断層タイプ及び地盤条件を考慮した最大加速度・最大速度の距離減衰式、日本建築学会構造系論文集、第523号、pp.63-70.
6)防災科学技術研究所川崎ラボラトリー(2007):文部科学省大都市大震災軽減化特別プロジェクト III.1 震災総合シミュレーションシステムの技術の開発 III.2 大都市特性を反映する先端的な災害シミュレーションの技術の開発 公開ソフトウェア
 http://www.kedm.bosai.go.jp/japanese/daidaitoku/software.html


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