経済活動への影響

 2004年新潟県中越地震の際、三洋電機では、子会社:新潟三洋電子の半導体製造工場が大きな被害を受けたことが経営を圧迫した。2005年3月期連結決算は、新潟県中越地震の被害損失423億円に、デジタルカメラの価格低下が重なり、約1371億円の最終赤字となったものである。被害の内訳は機械およびその他が184億円、棚卸資産が46億円、復旧費用などが270億円、設備投資が3億円となっている。これがきっかけとなって、わが国でもようやく事業継続計画(BCP)、危機管理へ取り組む民間企業が増えたところである。
 今回の中越沖地震では、一つのボトルネックが広く波及するという典型的な事例が見られた。国内の自動車産業が柏崎市内の(株)リケンの工場が停止したために、生産を休止せざるを得なかった。あらゆる産業で、このような事態への防護策を今後講じる必要があることを示した事例である。以下に、その概要を記す。

■自動車産業
 リケンは自動車の自動変速機(AT)や無段変速機(CVT)の油漏れを防ぐシール材で7割、エンジン関連のピストンリングで4割のシェアを持つ。新潟県柏崎市に集中する生産拠点では、精密機器の検査などに時間がかかった。
 トヨタ自動車など自動車メーカー5社は18日、新潟県中越沖地震で被災した自動車部品大手リケンの主力工場の操業停止を受け、生産を一時休止することを決めた。各社はリケン以外の部品メーカーからの調達を急いでいるが、リケンのシェアが高い部品は必要量の手当てが困難で、工場を休止せざるを得ないようである。
 被災した柏崎事業所の生産ラインが22日に一部復旧し、23日からエンジン基幹部品のピストンリングなどの供給を再開した。自動車会社から応援を派遣し、急ピッチで復旧が進められたようである。これを受け、各社とも23〜25日にかけ、順次工場を再開した。
 四輪車の生産計画の遅れは、トヨタが24日までで約5万5000台、スズキ1万8000台、ホンダ1万2700台、日産1万2000台、三菱自1万台、ダイハツ9000台などで、国内メーカー12社合計で12万4000台に達した。 各社とも休日操業などで増産を急ぐが、地震発生前からフル操業状態のトヨタが生産の遅れを取り戻すには、数カ月かかる可能性が高い。
 リケンでは、下の写真に示すように、工場の建物などに大きな被害はない。設備を再稼動させるのに時間を要したものである。したがって、今回は1週間程度で再開にこぎつけているが、建物自体に大きな被害を生じたような場合には、当然生産休止は長期に及ぶので、国内の自動車産業に大きな影響を与える可能性が高い。


■株価に見る影響
 http://www.yahoo.co.jp/で5月〜8月の3ケ月間の株の動きを見てみた。
 リケンの株価は地震直後に急落した後、復旧の目処が立った辺りから逆に上昇し、地震前を上回った。これは、当初は経営危機が懸念され、その後はそれだけ価値ある企業という判断であろうから、自然な反応と思われる。トヨタの方も、地震後に少し下がっている。ただし、両者とも7月末からの米国での株価の下落を受けた世界的な流れの影響の方が大きい。図3に日経平均株価、図4に米ドルの動きを参考までに示す。



図1 リケンの株価の動き(3ケ月:Yahooより)



図2 トヨタ自動車の株価の動き(3ケ月:Yahooより)


図3 日経平均の動き(3ケ月:Yahooより)


図4 米ドル(3ケ月:Yahooより)


■電力産業
 柏崎刈羽原発の問題が生じた東京電力と、新潟県地方へ電力を供給する東北電力の株価の動きを同様に図5、図6に示す。東京電力は、地震後、急落し、そのまま低迷が続いている。それでも、安定性が高い電力企業であるので、踏みとどまっている。東北電力の方は、特に地震の影響は見られず、8月に入ってからは、上述の米国市場の影響から逆に安定企業であることから買いが入っているものと考えられる。



図5 東京電力の株価の動き(3ケ月:Yahooより)


図6 東北電力の株価の動き(3ケ月:Yahooより)

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