6章 ライフライン

6.1 電力(北陸電力発表に基づく)
 能登半島へは北陸電力が供給している。最大停電戸数は約16万戸(石川県:約11万戸、富山県:約5万戸)と少なくないが、地震発生当日の16時時点で、志賀町富来で29戸、穴水町で約400戸、輪島市で57戸である。
 全体としては早い段階で電力を利用できていたようで、今回の地震での停電の影響は小さかったようである。

6.2 通信(内閣府発表に基づく)
 能登半島ではNTT西日本が通信サービスを行っている。交換機や中継伝送路の被害による通信サービスへの影響はなかった。電話の輻輳も、13時47分には解消している。携帯電話は、NTTドコモとauでは特段の被害はなく、規制も当日15時前後に解除している。ソフトバンクモバイルでは、停電の影響で、25日20時頃から基地局1局が停波し、仮設局を設置し30日23時前に復旧している。
 電力・通信を早い段階で利用できたことにより、関係機関の連絡等が比較的スムーズに行えたものと思われる。

6.3 上水道(厚生労働省及び石川県発表に基づく)
 最大で石川県内で約13000戸、富山県内で約50戸の断水被害が生じている。
 七尾市:1,500戸、志賀町:3,600戸、能登町:2,100戸など翌26日昼までには復旧している。
 穴水町では、断水戸数は550戸であるが、全戸復旧は3/28である。
 揺れが大きく、建物被害も大きい輪島市で水道被害も大きく、復旧に日数を要している。断水戸数は5,500戸で、27日2,536戸、3/31日で823戸となり、全戸復旧したのは4/7日の8時である。


図1 輪島市における復旧状況


6.4 下水道(国土交通省発表に基づく)
 門前水質管理センターで配管破損など施設の損傷があったが、水処理に支障はなかった。他の施設も同様である。また、マンホールの浮き上がりも100ケ所程度生じたが、早くに仮復旧が行われたことにより、大きな影響はなかった。浮き上がり量も、せいぜい10cm程度であったので、交通に大きな影響を及ぼすようなこともなかったと思われる。

6.5 道路交通(国土交通省発表に基づく)

 能登有料道路が通行止めとなった。「別所岳サービスエリア」に137名が孤立してしまったものの、当日17:20に解消している。横田ICまでは、4/20(金)15時、そしてGW直前の4/27(金)10時に予定通り、全線供用を再開している。もちろん、甚大な被害を被った箇所については、本格復旧工事はこれからであり、10月頃までに補強盛土による工事が行われる予定となっている。
 補助国道249号で落石・陥没等が9箇所で発生し、27日時点で4箇所が通行止めとなっている。30日時点で、八世乃(はせの)洞門の崩壊地点が通行止めである。
 輪島市道の被災により輪島市門前町の2地区が孤立した。六郎木(ろくろぎ)地区(8世帯16名)は、3月25日17時に、深見地区(37世帯87名)は3月26日17時に孤立は解消されている。六郎木地区については、3月28日に全世帯が自主避難していたが、4月5日に避難解消。深見地区については、迂回路として応急復旧した市道五十洲深見(いぎすふかみ)線を利用しているが、余震や降雨により夜間での通行に不安が残ることから、引き続き自主避難を継続している。
 朝日新聞の報道によれば、深見地区の住民の大半は70代以上の高齢者であり、かつて船員をしていた人が多い。退職前後に建てられた築年数の浅い家が多く、家屋本体の倒壊はなかった。住民のうち、約60名は25日夕に定置網漁船に乗るなどして、避難している。板谷区長らが残り、そのご子息らが食料を持って訪ねるところが報道された。この行動がどのように世間に捉えられたか不明であるが、赤ちゃんを連れての行動が危険であったことは言うまでもない。緊急時に冷静な判断をすることは困難であり、日頃から行政と住民が話し合い、共同認識を持つことが重要である。
 能登島は、2つの橋で本土とつながっている。今回、能登島大橋は通行止め、能登農道橋(ツインブリッジのと)も、総重量5t未満のみ通行可能という被害を受けた。能登島の人口は3000人を越えており、孤立した場合の脱出は容易ではなかった。

6.6 鉄道交通(国土交通省発表に基づく)
 安全確認のため、上越新幹線や北陸線で運転を中止したが、被害のなかった路線は当日中に運転を再開している。被害があったのは、JR西日本の七尾線とのと鉄道である。JR西日本の津幡ー七尾間では、レールのずれが数ヶ所あったため、翌26日始発に運転を再開している。和倉温泉駅でケーブル損傷があったが、七尾ー和倉温泉間も26日13時過ぎに、運転を再開している。
 のと鉄道では25ケ所で被害があり、3月30日始発より運転を再開している(それまでは、代行バスを運行)。のと鉄道は、昭和63年に設立されており、能登線は昭和63年に営業を開始したが平成17年に営業廃止となっている。七尾線は平成3年に営業を開始し、穴水ー七尾の33.1kmの区間を走り(8駅)、JR西日本の七尾線と接続している。

6.7 航空(国土交通省発表に基づく)
 能登空港で滑走路に亀裂が生じたため、当日は閉鎖したが、翌日未明に復旧作業を終了し、8時から通常運用を再開している。
 能登空港は、2003年7月7日に開港した新しい空港である。滑走路の長さは、2000mである。(独)土木研究所による報告の写真を見ると、液状化による噴砂のように見えるが(液状化層厚は薄い)、1枚の写真だけではよくわからない。

都市ガスについては、石川県内は、金沢市(金沢市企業局)と小松市(小松ガス株式会社)のみであり、今回の地震での被害はない。

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