輪島市門前町道下地区における木造建物被害調査


木造建物被害に対する基礎の影響を調べるため、門前町道下地区の木造建物(以下、単に建物と記述する)の調査を実施した。図1に示す調査エリア内の、道路から確認できた132棟の建物について、応急危険度判定結果と建物基礎の様子を一棟ずつ調査して集計を行った。


建物被害の調査地域


応急危険度判定結果については、建物に貼られている調査票を道路から判読し、「危険(赤)」と「注意(黄)」の区別を行った。「調査済(緑)」の紙は貼られていなかったので、張り紙のない建物で明らかに外見上被害のない建物は調査済建物(無被害)とした。基礎についても道路からの目視で判定を行い、布基礎(あるいはべた基礎)か独立基礎(束石基礎)かの区別を行った。道路からの判定なので、どちらの種類の基礎であるのかよくわからない建物も存在した。当然ではあるが、布基礎(べた基礎)でも、基礎と建物が金属でしっかり固定されているかまでは判別できなかった。

写真1は、被災した典型的な建物の例である。基礎が独立基礎で、道路向きに広い間口が取ってあり、瓦屋根のため上部が重い構造になっている。こういった建物は、比較的古いものが多い。また今回の地震では、この種の建物は、門前町道下地区に限らず被害を受けていた。中には、写真2に示すように、独立基礎の建物でも、開口部が小さいためかあまり被害を受けていないものも見られた。

被災した典型的な建物の例
写真1
独立基礎であまり被害を受けていない建物の例
写真2

表1は、調査結果を集計したものである。図2は、全体、基礎の種類別に被害の内訳をグラフ表示したものである。 調査した範囲では、およそ4割の建物が大きな被害を受けており、およそ7割の建物が何らかの被害を受けていた。そして独立基礎の建物は、6割近くが大きな被害を受けており、被害を受けていない建物は1割あまりに過ぎなかった。一方、布基礎の建物は、6割近くの建物が被害を受けておらず、基礎形状で被害の傾向が明らかに違っていた。しかし、布基礎のものでも大きな被害を受けたものが2割弱あり、大きな間口や瓦屋根による重い上部構造が一因であると考えられる。


表1 建物被害調査の集計結果



(a)合計             (b)独立基礎             (c)布基礎
図2 基礎構造別の被害棟数の割合

輪島市門前町道下地区の建物被害調査を行ったところ、基礎形状が被害に大きく影響している可能性を示す結果が得られた。ただ、被害が大きかった独立基礎の建物は、古い建物が多いので、その影響で大きな被害が出た可能性も否定できない。基礎構造と建物被害の因果関係をちゃんと明らかにするためには、一棟ごとに建物内部構造や築年等を調べるなど、詳細な調査が必要であろう。


なお、基礎形状の区別、建物被害の要因に関する考察は、独自の判断に基づくものである。


被害事例を示す。最下段は、基礎が健全であり被害が軽微であった事例である。


 


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