人工産卵床による外来魚の繁殖抑制調査

2021.10.1

平成30年7月の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市では、再度の災害防止策として国と県が連携して「真備緊急治水対策プロジェクト」が実施されています。そのプロジェクトの1つが小田川合流点付替え事業です。小田川が高梁川に流入する合流点を約4.6km下流へ付替え、両河川の洪水時の水位を下げることにより小田川の沿川地域及び倉敷市街地における治水安全度の向上を図るものです。

小田川から新しい合流点までは新しい河道が必要なため、このバイパス河道として小田川の南側に位置する柳井原貯水池(以降、貯水池)を利用する方法がとられました。しかし、この工事に伴い貯水池の上下流が河川とつながるため、これまで貯水池内に生息していた外来種が拡散することが危惧されました。
EJECはこの工事が環境へ及ぼす影響をモニタリングする準備として水環境及び動物調査の現状把握を担当していましたが、同時に課題となっていた外来種の駆除について提案し、対策を実施することになりました。このため対象となる外来種の状況や種ごとの拡散防止対策を整理した上で、以下の繁殖抑制を実施することとしました。

  • 特定外来生物に指定されているオオクチバス及びブルーギルを対象とした人工産卵床による繁殖抑制
  • 拡散防止対象種13種の個体駆除(外来動植物)

外来種の人工産卵床調査

水中に産卵基盤を設置し、そこに産卵させ孵化する前に卵を除去(駆除)する方法です。産卵基盤は産卵確認やメンテナンス(付着藻類の除去等)の容易さといった作業効率の向上を念頭に人工芝を用いました。貯水池の水深は最深で10m程度ですが、ダム湖のように岸が切り立った地形であり河床が平らな箇所が限られていたことから、水面下1mほどの位置に浮体から吊下げ設置することとしました。
産卵された卵を孵化する前に除去する必要があるため、週に1回の頻度で産卵状況を確認しました。

個体駆除の効果

2021年3月下旬に着手した個体駆除は、10月上旬時点で駆除総数6,997個体となっています。貯水池内に生息する外来水生動物の母数は不明ですが、事業に伴う外来種の拡散防止に寄与していると考えられます。
この他、ヌートリアについては倉敷市と連携しカゴワナによる駆除を別途実施しています。外来植物は植物調査時に駆除すると同時に、工事の施工業者の方々にも対象種の見分け方などをレクチャーし、工事中に生育を確認した場合は引抜き駆除を実施していただくなど、拡散防止対象種の全てを網羅した駆除体制を構築しました。

特定外来生物とは

明治時代以降に日本に入り込んだ外来生物の中で、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、または及ぼすおそれのあるものの中から、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(平成16年法律第78号、平成26年6月改正)に基づき指定された生物です。
柳井原貯水池に生息しているオオクチバス、ブルーギルも北米原産の外来種であり、在来の魚類、水生昆虫類等を餌として捕食するなど生態系への影響が懸念され、特定外来生物として指定されています。

業務名 令和2 年度 小田川付替環境調査他業務
期間 2021年7月29日~2021年9月30日
発注者 国土交通省 中国地方整備局 高梁川・小田川緊急治水対策河川事務所